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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Read 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,120 characters · 302 screens

Aozora Bunko

髪の匂いと、女の体臭とのまざった、あの胸を刺す媚香――。

「叔父さんの趣味でねえ、こんな髪、結ってんのよ――」

そういって、心もち俯向きながら、撫でつけた襟足の美しさ……。

黒吉は、もう眼の眩む思いがした。

「葉ちゃん、葉ちゃん……逢いたかったなあ」

「逢ったじゃないの」

「うん、よかった、ほんとによかった――」

黒吉は、長い年月、探し求めていた宝石に、やっと手を触れた時のように、興奮し、感激していた。

葉子はこの、以前から醜かった少年が、尚一層、片眼の跛足という化物のような姿に変ったのに一寸吃驚した以外、別に、再会したことには、さして感激もしていなかった。

言ってみれば、黒吉独りで感激し、興奮していたのだ。

でも、この二人が、こんなところで再会した、というのは、まったくどう考えても偶然だった。

黒吉には、葉子のたった一人の叔父が、ここで居酒屋を開いていた、ということが神の引合せ――いや、あの「予言の夢」の仕業であると、思っていた。

「葉ちゃん、僕は、葉ちゃんを、ここに来る前に見付てたんだよ」

「あら、いつ――」

「さっきさ……ほら、前にいったことがあるだろう、あの空を飛ぶ時に見る夢さ、あれだよ。