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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Read 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,120 characters · 302 screens
七ノ二
只、夢――、幻――――、として片附られるのだ。
しかし、あの「指環の発見」はどうだ。絶対、断然、断じて見える筈のない事実が、ありありと瞼に浮ぶのだ。
あの寤寐にも忘れ得ぬ、葉子のことすら、振り落して飛ぶ一瞬にうつる、妖しき雲にも似た幻影は、黒吉をぐいぐいと力強く四次元の宇宙へ連れ込むのだった。
端的にいえば、いつしかそれは「予言の夢」となって来たのだ。
思えば、指環の発見は、たしかにその「予言の夢」の発端であった。夢――というものが、記憶の反芻とすれば、空に浮く幻は、未来の夢であった……。
……或る秋の日。いつものように、黒吉は、葉子を介添にして、あらゆる支持物から開放された虚無の空へ、弾丸のように飛出した瞬間だった。
瞼の裏には、次の町での、大当りに当っている一座の有様が、アリアリと写った。
――そして、次の町で、初日の蓋を開けてみると、気味の悪いほどの人気なのだ。
盛況の第一日が閉場ると、急にひっそりして仕舞った小屋の中に、親方の珍らしくご機嫌のよい笑声が、久しぶりに廻って来た春のように、響いた。全く大入りの時は、誰だってうきうきした気持なのだ。