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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Read 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,120 characters · 302 screens
只のサラリーマンには違いないが、それでも会社の中で同好の者たちで作っている『星の会』の幹事ではあるし、特に『火星』という奴には人一倍の興味と関心を持っている――つまり素人天文家をもって自ら任じているのである。だから、たまたま今度の休暇に、丁度火星が十五年ぶりで地球に近づくというので、従弟の英二を誘って、かねて文通から知り合いになった私設天文台のあるこの高原に、骨休みかたがたやって来たわけであった。
「とにかく火星のことになると夢中なんだからなあ、昌作さんは」
「いいじゃないか」
「いいですよ、とてもいい趣味ですけど――」
「ですけどとはなんだい、妙ないい方だね」
「そんなことないですよ、――それはそうと、どんなキッカケから昌作さんは火星狂になったんですか」
「火星狂――? そんな言葉があるかね、狂は少しひどいぞ」
「おこっちゃいけませんよ、狂といったっていい意味です、その野球狂とか飛行狂とか――つまりファンですね」
「こいつ、うまく逃げたな、まあいいさ、何んだって興味を持てば持つほど面白くなって来るんだ、たとえば火星という奴は、あんなに沢山星のあるなかで一際赤く光っている。