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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
Read 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,120 characters · 302 screens
口の中で繰返した。
(それにしても青木のやつ、どうしたんだろう……)
通りがけに青木の部屋を覗いてみたが、そこはガランとしていた。
×
部屋へかえると食後の散薬を飲もうと、薬台の抽斗をあけた、その時、中に挟んであったのであろうか、パタンと音がして部厚い白の角封筒が落ちたのに気がついた。
(おや――)
なぜかハッとして拾い上げてみると、表には「河村杏二様」とあって裏には「青木雄麗」と書きながしてあった。
思わずドキドキ波打って来る胸をおさえながら封を切った。
読みすすむにつれて、私の手はぶるぶる顫え、額や脇の下には気味の悪い生汗が浮んで来た。
×
河村杏二様
僕は今、非常に急いでいるのだ、それにもかかわらずナゼこんな手紙をかいたか、それは最後まで読んで戴きたいと思う。
さて、極めて端的にいう、マダム丘子を殺したのは僕だ……不思議な顔をしないでくれたまえ、僕は気が狂ったのではない、いや、狂っているには違いないが、左様、僕はキザな言い方だが「恋と芸術」に狂ったのだ、僕はかつて丘子のような理想の女に逢ったことはない……だが世の中は皮肉だ、やっと廻りあったその僕の理想の女は、すでに大実業家の第二号なのだ、君にこの気持がわかるだろうか、も一つ、これを聞いたら君自身でも、この世の皮肉というものを痛感する