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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

Read 火星の魔術師 (かせいのまじゅつし) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,120 characters · 302 screens

Aozora Bunko

葉子は、返事もしなかった。しかし、その眼は、焼けつくように、痣になった傷に、注がれていた。

「黒ちゃん、痛い?」

葉子は、そういって、又そっと傷に触れたようだ。

「痛……」

黒吉は、思わず、出かかった言葉を、呑んで仕舞った。

傷の周囲に、見えないけれども、何か生温かいペラッとしたものを感じた。

(舐めた?……)

と思うと、その傷のある方の半身がズーンと、足の先きまで、痺れたように感じた。

「葉ちゃん……」

周章ていった、その言葉までが、痺れていた。

黒吉自身にとって、こんな異様な、触感は始めてだったが、尚も二三度舐められるのを感じると、これはあながち、不快なものではないように思えて来た。

むしろ、擽られた時に感ずる、あの不思議に、胸のどきどきする快感があった。

粘々として、弾力を持った、暖かい彼女の舌が、さぞ醜くいであろう傷の上を、引ずるように、過ぎる度に、黒吉の昂ぶった神経は、ズーン、ズーンと半身を駈下って、足元に衝突した。

「どお、痛い?」

葉子は、彼の顔を覗きこんだ。

「ううん」

黒吉は、周章て頭を振った。

「痛いもんか」

「だって、体が震えていたんだもの。