Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Read 私本太平記(一) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 246,214 characters · 495 screens
良い子になりたい新田なら良い子にさせ。婆娑羅の道誉には、存分、婆娑羅の欲望でも誇りでも振舞わせておけ。大丈夫の大事をなす道。それはすべて遠いものだ」と、胸をなでていたのだろう。いや、置文の声が彼に命じていたといってもよい。
なぜなのか。――右馬介は、叱られたという気もしない。それだけに、高氏の不機嫌に、なお、気をつかった。
「さぞ、お疲れにございましょう。ひとまず、上杉殿の内へ、おひきあげなされましては」
「お。そうするか」
じつは高氏も、不用意に見せた眉色の捨て場に困っていた機である。すぐ面をやわらげて、
「長居は無用。さっそく退出したくはあるが」
「何かまだ?」
「大蔵のお父上にも、さだめし高氏をお待ちかねかと思わるる。……だが右馬介、高氏はそんなに疲れ果てて見ゆるか」
「なにせい、過日来のご心労も積りおりましたこと。ごむりではございませぬ」
「いけないなあ……」と、高氏は自分の頬を両の手で撫でまわしながら。「久しく御病中にある父上へ、そんな顔は見せとうないのだ。ムム、こうせい右馬介」
「は」
「やはりわしは両三日、伯父上の屋敷にとどまる。が、そちは早速、大蔵へ伺って、今日までのことを、父の貞氏殿へ、ともあれ逐一、おはなし申しあげておけい」