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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Read 私本太平記(一) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 246,214 characters · 495 screens

Aozora Bunko

に申し述べたのでございました」

「ひゃっ、おもしろい。何度聞いても、おもしろい答弁じゃな」

高時が度外れに弾むと、女性の声帯そっくりな奇声になる。彼は手を打って、きゃっきゃっと笑い出しながら、

「はてさて、愉快な。こよいも評議待ちの徒然に、女性たちへその話をしてつかわすと、女どももみな、腹をかかえて笑いおった。誰に語っても、笑わぬやつはないぞ」

「この守時の御報告より前に、誰からそれをお聞き知りでございましたか」

「道誉が告げた」

「あ。佐々木が」

「道誉は、近頃また、高氏を賞めちぎッておる。初めは油断ならぬ者と思われたが、まったくは、よい人間じゃと。なにさま、高氏とは、おかしげな男とみゆるの」

「高氏が元服の折は、たしか父貞氏に伴われ、御拝謁をとげおりますゆえ、太守にも、御記憶のあるはずでございますが」

「いや、忘れた。どんな顔の男やら、覚えもない。……で、其許に申しつくるのじゃ。十日ほど後、いつもの鳥合ヶ原で、犬合せが催さるるのを知ってか。その折、高氏を伴うて、余の桟敷へ罷れ。よいか。其許をひきとめたのは、そのためじゃ。忘るるなよ」

登子

その後も、六波羅飛脚は何度かあった。