Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Read 私本太平記(一) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 246,214 characters · 495 screens
大鳥居の下で、手綱を右馬介に預け、彼一人で赤橋を渡って行く。そして、清げな館造を木の間に見ながら、一門の前栽を深く通って、
「お約束の、足利又太郎にござりますが」
と、内へ告げた。
すぐ通されて、客書院に坐す。――庭はすぐ裏の鶴ヶ岡を容れ、落つる水は、放生池の流れへそそぎ、風ともなく、自然の音楽が屋を繞って吹き、その微妙な奏でに独りの客も、しばしは飽かぬ心地の中だった。
ほど、あって。
「お待たせした」
と、あるじの赤橋守時が姿を見せた。かねて、高氏もこの人のことは伯父憲房から聞いている。蔭にあってのわが恩人であることを。――で、姿を見るや座を退がって、心からな両手をついた。
「これは、守時様でおわせられますか。足利の部屋住み、又太郎高氏にござりまする」
「おう、お待ちしていた。それになお、先ごろ御出府の件も、まずは無事に落着して、およろしかったの」
「まったく以て、お力添えのおかげ。もし御当家のお助けなくば、高氏が身はもとより、国元の始末なども、いかに成り果てたやら知れませぬ」
「いやいや。何も別儀なことをしたわけではない。礼などいわれては、かえって迷惑」