Japanese reading practice

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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

Read 美少女一番乗り (びしょうじょいちばんのり) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 73,583 characters · 149 screens

Aozora Bunko

六

「しッ、誰かいる」

ぎょっとして振返る藤兵衛。――部屋の隅に立ててある屏風の陰に、ぼんやり立っている者があるから、

「誰だッ」

と呶鳴りながら行ってみると、だらりと涎をたらしたまま清吉が佇んでいた。

「なんだ清吉じゃないか」

「何者だそいつ」

「聾で唖で白痴という、三拍子揃った因果な奴です、こやつなら心配はありません、――さああっちへ行っていろ、……と言っただけでは聞こえないのか、しようのない馬鹿だ」

「あうあう、あう、うう」

「訳がわからない、さあ行け行け」

藤兵衛は邪険に清吉を押出し、ぴったり襖を閉めて座へ戻った。

六

街はすっかり寝静まって、鼻をつままれてもわからぬような闇である。――お通は夢中で家をぬけ出して来たが、法心寺の山門近くまで来ると、さすがに闇の怖さが犇々と身に迫って、――来なければよかった。

と幾度も後悔した。

定二郎の話を聞いたお通は、どうしても自分の耳で事実をたしかめたいと思い、みんなの寝るのを待兼ねて出て来たのだが、こんな夜更けといい、まして怪異な仁王像を見に行くかと思うと足の竦む思いがする。

――でもここまで来てしまったのだもの、思い切って行くより仕方がないわ。