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そうもくちゅうぎょ
艸木虫魚
薄田 泣菫
Read 艸木虫魚 (そうもくちゅうぎょ) by 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,254 characters · 226 screens
そして言葉丁寧に挨拶した。
「御所望により、虚堂の墨蹟を御覧に入るべく御招きはいたしたが、都合あって、今日はその運びに参りかねた。前以ってそれを申したら、お入りはなかろうかと存じて、わざと隠し立してお招きいたした次第、なにとぞ悪しからず……」
三斎はそれを聞くと、はっとなって、急に眼の前が暗くなったように思った。だが容子には少しもそんなところは見えなかった。
「ぶしつけな御願を申上げましたのに、お叱りはなくて、かえって御丁寧な御挨拶痛み入ります。御秘蔵の禅師の墨蹟、今日拝見が叶いませぬのは、まことに残念至極に存じますが、また重ねての折をお待ちすることにいたしましょう。」
四方山の雑談の後、三斎は礼を述べて立上った。そして黒書院と白書院とのなかにある廊下に来かかると、そこの杉戸の前に、若狭守が一人立っていた。若狭守は箱から取出した懸物を、蓋の上に持ち添えたまま、先刻から何ものかを待っているらしく思われた。三斎が近づくと、彼はそこに跪いた。
「お口上にござります。」
三斎もぴたりと歩みを止めて、廊下に跪いた。若狭守は言った。
「先日のお言葉に、御老年の御身、次の御参府も望まれないによって、虚堂の墨蹟御覧になりたいとのことでござりましたが、この後とも引続き御参府をお待ちいたせばこそ、わざと今日はお目にかけるのを差控え