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そうもくちゅうぎょ
艸木虫魚
薄田 泣菫
Read 艸木虫魚 (そうもくちゅうぎょ) by 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,254 characters · 226 screens
八冊を手に取上げて、やっとこなと立上ろうとすると、急に次の間の襖が開いて、
「異存がおまっせ、わてに。」
と、呼びかけながら、いが栗頭の五十恰好の男が入って来た。大阪に名高い古本屋の主人で、M氏とは至って懇意な仲だった。
古本屋の主人は、脚本作者の側に割込むと、ちょっと頭を下げて皆に挨拶した。そして懐中からぺちゃんこになった敷島の袋を取出すと、一本抜取ってそれに火をつけた。
「どなたのお言葉か知りまへんが、一代男をとは殺生だっせ。これを灰にして見なはれ。世間にたんとはない西鶴物が、また一部だけ影を隠すわけだすからな。それにこんな手持のよい一代男は、どこを捜したかて、滅多に見られるわけのものやおまへん。わてがこれを先生に納めたのは、つい先日のことだしたが、その時の値段が確か千五百円だしたぜ。」
「ほう、千五百円。そない高い本とは知らなんだ。どれ、どれ……。」
駒十郎は、喫みさしの煙草を、火鉢の灰に突込んで、その手で脚本作者の膝から、本の一冊を取上げた。あたりの二、三人は、首をのばしてそれを覗き込んだ。
「そんなに高くなったかな。五百円の値を聞いて、びっくりしたのは、つい二、三年前のように思ったが。