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きょうしゅうのしじん よさぶそん
郷愁の詩人 与謝蕪村
萩原 朔太郎
Read 郷愁の詩人 与謝蕪村 (きょうしゅうのしじん よさぶそん) by 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,038 characters · 78 screens
五月雨や御豆の小家の寝覚がち
しかし夏の湿気がなく、家屋の構造がちがってる外国人にとって、こうした俳句は全然無意味以上であり、何のために、どうしてどこに「詩」があるのか、それさえ理解できないであろう。日本の茶道の基本趣味や、芭蕉俳句のいわゆる風流やが、すべて苔やさびやの風情を愛し、湿気によって生ずる特殊な雅趣を、生活の中にまで浸潤させて芸術しているのは、人のよく知る通りであるけれども、一般に日本人の文学や情操で、多少とも湿気の影響を受けてないものは殆んどない。(すべての日本的な物は梅雨臭いのである)特に就中、自然と人生を一元的に見て、季節を詩の主題とする俳句の如き文学では、この影響が著しい。日本の気候の特殊な触感を考えないで、俳句の趣味を理解することは不可能である。かの湿気が全くなく、常に明るく乾燥した空気の中で、石と金属とで出来た家に住んでる西洋人らに、日本の俳句が理解されないのは当然であり、気象学的にも決定された宿命である。
五月雨や御豆の小家の寝覚がち
「五月雨や大河を前に家二軒」という句は、蕪村の名句として一般に定評されているけれども、この句はそれと類想して、もっとちがった情趣が深い。