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きょうしゅうのしじん よさぶそん

郷愁の詩人 与謝蕪村

萩原 朔太郎

Read 郷愁の詩人 与謝蕪村 (きょうしゅうのしじん よさぶそん) by 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,038 characters · 78 screens

Aozora Bunko

雪かなしいつ大仏の瓦葺

五月雨や蚕わづらふ桑畑

日の道や葵かたむく五月雨

凩に匂ひやつけし帰り花

山吹や笠に挿すべき枝の形

雪かなしいつ大仏の瓦葺

夢のように唐突であり、巨象のように大きな大仏殿。その建築の家屋の上に、雪がちらちら降ってるのである。この一つの景象は、芭蕉のイメージの中に彷徨しているところの、果敢なく寂しい人生観や宿命観やを、或る象徴的なリリシズムで表象している。人工の建築物が偉大であるほど、逆に益々人間生活の果敢なさと悲しさを感ずるのである。

五月雨や蚕わづらふ桑畑

暗澹とした空の下で、蚕が病んでいるのである。空気は梅雨で重たくしめり、地上は一面の桑畑である。この句には或る象徴的な、沈痛で暗い宿命的の意味を持った暗示がある。

日の道や葵かたむく五月雨

曇暗の雲にかくれて、太陽の光も見えない夏の昼に、向日葵はやはり日の道を追いながら、雨にしおれて傾いているのである。或る時間的なイメージを持っているところの、沈痛な魂の瞑想が感じられ、象徴味の深い俳句である。

凩に匂ひやつけし帰り花

冬の北風が吹きすさんで庭の隅に、侘しい枯木の枝に咲いてる帰り花を見て、心のよるべない果敢なさと寂しさとを、しみじみ哀傷深く感じたのである。

山吹や笠に挿すべき枝の形

ひとり行く旅の路傍に、床しくも可憐に咲いてる山吹の花。