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きょうしゅうのしじん よさぶそん
郷愁の詩人 与謝蕪村
萩原 朔太郎
Read 郷愁の詩人 与謝蕪村 (きょうしゅうのしじん よさぶそん) by 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,038 characters · 78 screens
愚に耐えよと窓を暗くす竹の雪
蒲公英の忘れ花あり路の霜
水鳥や朝飯早き小家がち
水仙や寒き都のここかしこ
そこへ霰が降って来たので、隣家の鍋にガラガラ鳴って当るのである。前の「我を厭ふ」の句と共に、蕪村の侘しい生活環境がよく現われている。ユーモラスであって、しかもどこか悲哀を内包した俳句である。
愚に耐えよと窓を暗くす竹の雪
世に入れられなかった蕪村。卑俗低調の下司趣味が流行して、詩魂のない末流俳句が歓迎された天明時代に、独り芭蕉の精神を持して孤独に世から超越した蕪村は、常に鬱勃たる不満と寂寥に耐えないものがあったろう。「愚に耐えよ」という言葉は、自嘲でなくして憤怒であり、悲痛なセンチメントの調を帯びてる。蕪村は極めて温厚篤実の人であった。しかもその人にしてこの句あり。時流に超越した人の不遇思うべしである。
蒲公英の忘れ花あり路の霜
小景小情。スケッチ風のさらりとした句で、しかも可憐な詩情を帯びてる。
水鳥や朝飯早き小家がち
川沿いの町によく見る景趣である。
水鳥や舟に菜を洗ふ女あり
と共に、蕪村の好んで描く水彩画風の景趣であって、薄氷のはる冬の朝の侘しさがよく現れている。
水仙や寒き都のここかしこ
京都に住んでいた蕪村は、他の一般的な俳人とちがって、こうした吾妻琴風な和歌情調を多分に持っていた。