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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
Read 鉄塔の怪人/海底の魔術師 (てっとうのかいじん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 160,770 characters · 322 screens
人間かと思いましたが、人間ならば顔は白く見えるはずです。どうも人間ではなさそうです。人間ではなくて人間ほどの大きさのものです。
ゾーッと、背中がさむくなりました。
その黒いものは、だんだんこちらへ近づいて来ます。もう窓ガラスのすぐそばまで来ました。ぼんやりとかたちが見えます。それはいままで一度も見たことのないような、うすきみのわるい、へんてこなものでした。
ギョッとして、心臓がのどのところまで、とびあがるような気がしました。
そのものが窓ガラスにぴったり顔をくっつけて、賢吉君をにらみつけたからです。
ひたいの下がゴリラのようにくぼんでいて、そのおくから、リンのように青白く光る、ふたつの目がのぞいていました。口は耳までさけて、そのくちびるのあいだから、二本の牙が、ニューッと、のびていました。それは人間の顔ではありません。動物の顔でもありません。なんだかえたいのしれないものです。顔ぜんたいが、まるで鉄のように黒びかりに光っているのです。
賢吉君はにげだそうとしました。しかし、リンのように光る目でにらみつけられると、ちょうど、ヘビににらまれたカエルのように、もう身動きができなくなって、いすにかけたまま、じっとしているほかはないのでした。