Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

てっとうのかいじん

鉄塔の怪人/海底の魔術師

江戸川 乱歩

Read 鉄塔の怪人/海底の魔術師 (てっとうのかいじん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 160,770 characters · 322 screens

Aozora Bunko

た。

「きっと海へなげこまれたんだ。そして、波のまにまにただよっているんだ。」

と、さとりました。

ああ、なんという、心ぼそい身の上でしょう。タルには少しのすきまもないのですから、ないてもわめいても、だれにも聞こえるはずはありません。

「おとうさん! おかあさん! 小林さーん!」

聞こえないとわかっていても、ひとりでに、口から出てくるのです。賢吉君は、いくどもいくども、声をかぎりに、叫びました。

そのうちに、とつぜん、タルのゆれかたが、かわってきたのに気づきました。いままでは、ゆらゆらとただよっていたのですが、それが、きゅうに、一方へ走りだしたようなかんじがするのです。波をのりこえ、おそろしい、いきおいで、進んでいるのです。なんだかひじょうなスピードの快速艇に、ひっぱられているような気持です。

ひっぱられるにつれて、タルはくるくるまわるのです。賢吉君のからだも、上をむいたり、横をむいたり、たえずくるくるとまわっています。そのたびに、からだのどこかが、タルにぶつかるので、その苦しさといったらありません。

賢吉君は、こんな苦しいおもいをするぐらいなら、はやく死んでしまったほうがいいとおもいました。