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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
Read 鉄塔の怪人/海底の魔術師 (てっとうのかいじん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 160,770 characters · 322 screens
まるで、あつい黒ビロードのきれで、目かくしでもされたような暗さです。
そのときです。広田は、うえ死によりももっとおそろしいことに、気がつきました。地下室には、なにかがいるのです。かすかに、なにものかの動いている音が聞こえます。そいつが、ジリジリと、こちらへ、近よってくるらしいのです。
広田はゾーッとしました。がい骨もようのある大カブトムシを、おもいだしたからです。あのおそろしいカブトムシが、このまっ暗な地下室に待ちかまえていて、広田にきがいをくわえようとしているのではないでしょうか。
ガサガサと、はっきり聞こえます。こちらへ、はいよってくるのです。その音が、だんだん大きくなってきました。もう一メートルほどのところへ、近づいているのです。
「だれだ! そこにいるのは、だれだ!」
広田は、おもわず大声をたてて、身がまえをしました。
すると、ふしぎなことに、怪物が人間のことばで、答えました。
「高橋さんのうちの広田さんでしょう。ぼくですよ、ぼくですよ。」
「ぼくって、だれだ。」
こちらは、まだゆだんしません。とびかかってきたら、とっくみあいをするつもりで、身がまえしています。