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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
Read 鉄塔の怪人/海底の魔術師 (てっとうのかいじん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 160,770 characters · 322 screens
それが、レンズのかげんで、いかにも、ほんとうのように見えたのです。
「ハハハ……、どうだね。おもしろかったかね。」
白ひげのじいさんは、小林君の顔を見つめて笑いました。そして、ふしぎなことをいうのでした。
「いまのけしきを、よくおぼえておくんだよ。これは、のぞきカラクリだが、ほんとうに、こういう山や森があるんだ。黒いお城も、あのでっかいカブトムシもね。……きみは、いまに、きっと、おもいあたるときがある。やがてこの世に、おそろしいことが、おこるのだ。ウフフフ……、それじゃ、小林君アバよ。」
じいさんは、そういいすてて、車のハンドルをにぎると、そのまま、むこうへ、遠ざかっていき、やがて町かどをまがって見えなくなってしまいました。ふしぎなことに、のぞきカラクリをのせた車は、すこしも音をたてませんでした。そして、じいさんと車とは、まるで、夕もやのなかへ、とけこんでいくように感じられたのです。
小林少年は、ぼうぜんとして、もとの場所に、つっ立っていました。なにかキツネにばかされたような気持です。いまのは、ほんとうのできごとだったのでしょうか。それとも、まぼろしでも見たのでしょうか。