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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
大坂落城の元和元年から、五十一歳小倉の小笠原家に逗留までの間を――(彼の壮年期に)
それから後、六十二歳の最期までの間が、彼の晩年期として考えられるのである。
そこで第一期の少年時代の世状と、彼の郷土における逸話や、関ヶ原へ出たことなど思い合せてみると、大体、その心持や当時の四囲の事情も頷けてくるし、ことに関ヶ原以後の彼が、その戦争の結果に依ってどんな示唆をうけたか、そしてどうして「剣」を道とする道をえらんで行ったかも、うすうすながら分る気がするのである。
まず、思想的にも、彼は大きな教訓を、時勢の事実から与えられたろう。それから片田舎の眼界を、急激に、中央の趨勢から世情へみひらいたことであろう。
彼の素質が、関ヶ原を契機として、一転したことは、疑うべくもない。
それから第二期の――大坂落城と世間の趨勢を見ては、愈彼自身の向う道も、胸底に決していたに違いない。それは名利の外表に浮び出ようとするよりも、さらに潜心的になって「道」への究明に没して行ったことが窺われる。年表に拠って考えてみても、それ以後五十年ぢかくなるまでの彼の足跡は、青年期よりもさらに不明瞭にぼかされているからだ。