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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Read 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,786 characters · 278 screens
もう一つは当所の伊東家に保存してあるかと思います。
とも語っている。
私を案内してくれた朝日の支社の人たちも、その話は信じているらしく、大甕を見た人の鑑賞に依ると、それは昔、水甕として使われたこの地方でいうハンド甕と称する種類の焼物だということであった。
ここでただ怪訝られるのは、遺品だけならよいが、大甕の中に紋服で端坐していたという人間の遺骸はいったい誰か、という疑問である。
武蔵の終焉の地熊本には、武蔵の遺骸を葬ったという武蔵塚がすでにある。また田向山の碑は、歿後九年の後の物だし、掘起した人夫の話の「大たぶさに結っていた――」ということをそのままとすれば、それは晩年の武蔵その人の結髪とは元より受けとれない。
けれど小倉の地方には、武蔵の遺骸は、歿後養子の伊織が迎え取って、田向山の菩提所に葬ったので、熊本のそれは分髪の墳墓であるというような説も一部にあることはあるのである。
細川家と小笠原家との姻戚関係だの、また、小倉の大淵和尚と、熊本の春山和尚との師弟関係だの――なお、武蔵を養父とする宮本伊織が小倉藩の家老であったなどの密接な点を考えてゆくと、いずれにせよ武蔵の遺骸問題もなかなか、そう簡単にどことも断定はできないものがあるように思われる。