Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens
そして二人が切り結んでいる態を見るや、彼はなんの猶予もなく、得意の捕縄をスルスルと解いて、天堂一角へ狙いをつけた。
そこで、捕縄の先が、宙をうねって行った途端に、一角は早くも感づいて、楢の茂った谷間の崖へ身を躍らしてしまったのだ。
「もしやあなた様は、時雨堂においでになった、法月様ではございませんか」
的をはずした捕縄を輪にしながら万吉は、弦之丞の前へ姿を見せた。
「おう、してお身は何者でござる」
「あの晩、泊り合せた万吉という者ですが、深いお話は後にして、どうか、あすこにある駕から先にみて上げて下さいまし……、何だか、苦しそうな呻き声が洩れております」
駈け寄って、山駕を括した縄を切りほどくと、銀五郎の体が力なく外へ横仆れになった。さっき、多少の手当てを加えられたので、気はついていたが、奄々として苦しそうな息づかい。
「おッ、銀五郎ではないか」
弦之丞は、白い膝の上へ、その体を抱え込んで、二度ほど、耳元へ口をつけて名をよんだ。
「あ……弦之丞様……」
「分ったか。気をたしかにもて」
「分りました……」ガックリとうなずいて、「お助けなすって下さいましたか」
「おお、蜂須賀家の者の手より取り戻したのじゃ。