Japanische Klassiker mit Furigana
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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
Lesen Sie それでも私は行く (それでもわたしはいく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.708 Zeichen · 181 Bildschirme
「はア」
とにかく鶴雄は坐った。
宮子は女中にビールをいいつけた。
「ビール……?」
鶴雄は美しい眉を曇らせた。
「――僕はビールなんか飲めませんよ、だいいち、僕はビールを飲みにこんな所へ来たのじゃない!」
「判ってるわよ、あの人に会いにでしょう」
宮子は蓮ッ葉に言いながら、何かむっとこみ上げて来る嫉妬を感じて、
「――あんたが飲まなきゃ、あたしが飲むわよ」
「女だてらに……」
と、言おうとしたが、さすがに鶴雄はそれはよした。
やがて、ビールが運ばれて来た。
「いかが……」
うっとりした眼で、鶴雄の睫毛の長い眼を見ながら、宮子はビールの瓶を持った。
「僕は飲みません」
「あら、どうして……」
「飲まないと言ったら、飲まない!」
鶴雄は色町に育ったせいか言葉づかいの柔い青年だったが、思わず声が荒くなった。宮子が憎むべき小郷の妹だということが頭にあるからだろうか、いや、それよりも――。
「ビールなんかどうして飲みたいんです。日本には、いま、ビールどころか、米も芋も食べられない人間がどれだけいるか知っていますか」
「知ってるわよ」
「知っていて、よくビールが、しかも白昼女だてらに飲めますね」