Japanische Klassiker mit Furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Lesen Sie みなかみ紀行 (みなかみきこう) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.087 Zeichen · 203 Bildschirme
杜鵑の声は、湖とは反対の側の山の上から落ちて来るのであった。夕日の光が向う岸の森のうえに聳えて居る山のいただきに消えてしまっても、なお暫くは啼き続けていた。その山の中腹から上の草原は、まだ真冬のままの枯れほおけた色を残しているのであるが、その枯野の色と杜鵑の声とが妙に寂しい調和をなす様にも思われて、円味を帯びた頂上の暮れてゆくのが惜しまれた。わざと点けずにおいた電燈の光が部屋を照らしてもなお暫くこの鳥は啼きつづけていた。
気持よく飲んだ酒のあと二三時間を実によく熟睡する癖の私は、やがてからりとしたすがすがしい心地で眼を覚ました。あおむけのまま、身うごきもせずに眼を開いている瞬間に、
「ほったんかけたか、ほったんかけたか、けきょ、けきょ」
と啼く例の声が耳に入った。オヤ、と思いながら、なお静かに待っていると、ツイ軒ちかくででも啼く様に、しみじみと聞えて来る。僅かに首を傾けて縁側の方を見ると、玻璃戸がほんのりと明るい。サテよく眠ったものだと、枕許の時計を見ると矢張り真夜中で、丁度二時半であった。
「すると月夜だナ」
そう思いながら私は躊躇なく夜具から出た。