Japanische Klassiker mit Furigana
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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
Lesen Sie 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) von 牧 逸馬 (まきいつま) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 251.305 Zeichen · 498 Bildschirme
この、見るかげもない畸形のハノイ・シャンは、その、狂えるこころの全部を挙げて、骨を折って命を取りとめて呉れた医師を憎んだ。世を呪った。そして、故国を捨てて巴里へ走ったのだった。
巴里へ来た最大の目的は、出来ることなら、名医の再手術を受けて、弯曲している背骨だけでも癒したいという熱望からだったが、誰も怖がって、その大手術に手をつけてみようという医者がないのだ。ハノイ・シャンの運命は、いよいよこれで行き止まりだった。怒りと絶望と憎悪に、漸時に脳髄を蝕まれて、彼は完全に人間が変っていた。何時の間にか、行方不明になっていたが、そのときハノイ・シャンは、同時に他の社会へ別人として現れていたのである。悪人組合の元兇として、彼の名が、一時に高くなって、この東洋の狂人のあたまから割り出す狡猾猛悪な犯罪は、忽ちにして巴里の恐怖となったのだ。蜘蛛のハノイ・シャン――巴里の何処かに、そういう存在が蠢いていることは、誰でも知っていた。
このハノイ・シャンの眼をつけたのが、前に言ったように、和蘭や白耳義の宝石商人の定宿のようになっている、ロウモン街のホテル・アムステルダムだった。