Japanische Klassiker mit Furigana
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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
Lesen Sie 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) von 牧 逸馬 (まきいつま) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 251.305 Zeichen · 498 Bildschirme
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前述の通り、壁に、厳丈な鉄の鉤が打ち込んであって、それが、重い窓掛を通す鉄棒を支えている。勇敢なカミィル巡査は、カアテンを引く強い絹の組紐を頚に巻いて、その鉤からだらりと下がって縊死していた。顔が、別人のように青黒くふくれて、もう無機物の眼を大きく見ひらいて寝台のある反対側の壁へ、かっと、虚ろな視線を凝らしていた。それは恐しい形相だった。何事か名状出来ない恐怖とショックが原因で自殺したものらしいことを示していた。今度も、自殺であることは、疑いを容れない。しかも、死にたい衝動、憧憬、或いは、死ななければならなかった理由が何んなに強かったか――その証拠に、カミィル巡査は坐る時のようにきちんと膝を折り曲げ、タオルで足首を腿へ縛りつけて、足が床へ届かないように細心の注意を払って吊り下がっているのだ。鉤が比較的低いところにあり、綱が長いので、普通にやったんでは立ってしまって縊死の目的は達せられないのである。
個人的に出かけたのだが、見張りに行った巡査まで自殺したとなると、騒ぎは大きい。巴里の心臓に幽霊ホテル、自殺室などと新聞は書き立てる。幾ら屍骸を検べても、暴力の痕跡は元より、何らの怪しい点は発見されないのである。