Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女は「かれら」と話すだけの時間を費やしただけのようであった。

「ああ戻ってくれたか」おみのを見ると得石は片手で胸を撫でた、「ながいものだから、また置いてきぼりをくったかと思いましたよ」

「あんなことを」おみのは火鉢の脇に坐り、掛けてある燗鍋に触ってみながら、したたるように嬌かしいながし眼をくれた、「――今夜は泊るつもりでって、手紙に書いてあげたでしょう」

「こんどこそ、本気にしますよ」

「ではいままでは、本気じゃなかったんですか」

おみのは酒を徳利に移し、燗鍋へ新らしく酒を注ぎ足してから、彼に酌をした。

「冗談じゃない、こっちは初めから本気だったのに、いつも肝心なところでおみのさんに逃げられたんですよ」そこで彼は思いだしたように、慌ててまわりを眺めまわした、「今日は約束した物もちゃんと持って来たし、――へんだな、さっきここへ」

「手提ですか」とおみのが云った、「手提ならここにありますよ」

火鉢の脇から手提を取って、おみのは彼の手へ渡した。彼はいそいで袋をあけようとしたが、紐がもつれてなかなかあかなかった。

「なにをお出しになるの」

「このまえの約束した物ですよ」