Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
二
と云っておはなは声を低くした、「そのうち急にお新ちゃんが、いまうちに沢田屋そっくりのお客が来ているって云いだしたんです、旦那は沢田屋を御存じでしょう」
「知らないな」と千之助が云った。
「あらいやだ」とおはなは片手で彼を打つまねをした、「沢田屋というのは屋号、島村東蔵といって、いま売出しの評判な女形じゃありませんか」
二
それを聞いてどきっとした、とおはなは続けた。なぜかというと、このあいだ蝶太夫が殺されたとき、いっしょに来た女、――つまり蝶太夫を殺したと思われる女が、沢田屋によく似ていた。身ごなしや口ぶりの色っぽいところなど、沢田屋そっくりにみえたからである。
「それであたし慥かめてみようと思って、お新ちゃんと相談のうえお茶を替えにいったんです」と云っておはなは息をはずませた、「向うじゃあ忘れてるでしょう、あたしは側へいってようく見てやりました」
「その女だったのか」
おはなは重おもしい眼つきで千之助をみつめ、自分の証言がどんなに重要な価値を持つかということを示すように、極めてゆっくりと頷いた。
「髪の結いかたも、着物や帯も変っていました」とおはなは囁くように云った、「けれども躯つきや顔だち、声まで変えることはできやしません」