Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
喜兵衛は首を振った、「いや、そんなつもりはない、徳次郎もそんなことは考えてはいないだろう、もしおまえが、あれを好きになるようなら、いっしょになるがいいし、そうならないにしても、徳次郎はきっとおまえを守ってくれる、これだけは、間違いのないことだから、信じておいで」
これで話は済んだ、すっかり話したら気が楽になった。私も眠るからおまえも寝るがいい、と云って喜兵衛は眼をつむった。
――お父つぁんは死ぬ。
夜具の中へ戻ると、おしのは掻巻を額までかぶり、声をひそめて泣いた。そんなことがあっていいだろうか。
父は苦労のしどおしだった。妻をもちながら、良人らしい扱いをされたことがない。雇人が寝たあとまで、しょうばいのために精根を磨り減らした、「むさし屋」の資産は先代の倍ちかくになったともいわれるが、父はそのために自分の命を削った。現実に、自分の命を削ってしまったのだ。
――そうしていま、生きて来たたのしみをなに一つ味わわず苦労のし放しで死んでゆく。
これはあんまりだ、あんまりむごすぎる、とおしのは心の中で叫んだ。神仏があるかないか知らないが、もしあるなら父を助けて下さい。