Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
と若い者たちに云った。
――なにを云いたかったのお父つぁん。
釣台といっしょに歩きながら、おしのは心の中で父に呼びかけた。母のことなど口にも出さなかったのに、いよいよ死ぬとわかってから急に会いたがり、戸板に乗ってでもいって、ひと言だけ云ってやりたいことがあると云った。なんだろう、なにを云いたかったのだろう。おしのは寮へゆき着くまで、そのことを考え続けていた。
寮へ着くと、釣台のまま座敷へあげ、みんなを座敷から出して、おしの独りで父を台からおろし、夜具を敷き直して、その中へ父を移した。そして、小屏風で枕のほうを囲ってから友吉を呼び、二人で釣台を運びだして、駕籠屋の若い者たちに渡し、少し余分に駄賃を包んで与えた。
「おまえ帰っておくれ」とおしのは友吉に云った、「お父つぁんは無事に着きましたって、番頭さんにそう云ってちょうだい」
友吉は帰っていった。
おしのはおまさを呼んで、香炉と香を持って来させ、父の枕許でいた。父は重態であるが、人に見られるのをいやがるから、この座敷にははいらないように、おしのはきびしい調子でおまさに云った。母が帰って来るまでは、生きているようにみせなければならない。