Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
嘉助はよほど残りたそうであったが、おしのは帰るように云い、自分はすぐに店へいってみた。手代の忠三と徳次郎が、父と机をはさんで坐り、帳合をしていた。忠三は二十一、徳次郎は二十三歳、年が明けると暖簾を分けて店を出すことになっている。ほかに小僧をいれて店の者が七人いるが、みんな店の次の部屋で、読み書きや算盤の稽古をしていた。――おしのは父のようすを見た。喜兵衛は四十五歳という年よりずっと老けてみえる。躯もすっかり痩せているし、顔は頬骨から顎の骨まであらわになり、おちくぼんだ眼や、抉ったようなこめかみや、油けのない灰色の髪などは、そのまま死相を示すように感じられた。
――いいえ、そんなことはない。
父はまえからあんなふうだった、とおしのはかぶりを振った。十二の年で奉公に来、二十五で婿養子に直った。それから二十年、ものみ遊山にもゆかず、寄席や芝居を見るでもなく、もちろん酒や煙草の味も知らない。ただ「むさし屋」のため、しょうばい第一と勤めとおして来た。老舗の名は聞えていたが確実に資産を積んだのも、隣りにあった紙問屋を買って、油屋の店をひらいたのも、みな喜兵衛のはたらきであった。