Japanische Klassiker mit Furigana
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うもんとりものちょう
右門捕物帖(三)
佐々木 味津三
Lesen Sie 右門捕物帖(三) (うもんとりものちょう) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 241.558 Zeichen · 480 Bildschirme
「…………」
「え? ちょっと! ね、だんな! かなわねえな。すこうし眼がつきかけると、じきにむっつり屋の奥の手を出すんだからね。なにもあっしだって、ひとりごとをいうために生まれてきたんじゃねえんだ。ああでもねえ、こうでもねえと、いろいろやかましくしゃべっているうちにゃ、だんなの眼もはっきりついてくるだろうと思って、せいぜい年季を入れているんですよ。ね、ちょっと。ええ? だんな!」
うるさくいうのを、名人は柳に風と聞き流しながら、しきりと右の畳御幣を朝日にすかしつつ見ながめていましたが、ふとそのとき、ありありと目に映ったのは、折りたたんだ紙の中にも何か書いてあるらしい墨の跡でした。これは書いてあるのがあたりまえです。畳御幣は中にご立願の文句を書いてたたみ込むのが普通ですから、墨の跡の見えるのが当然ですが、しかしその書かれてあった祈願の文句なるものが、すこぶる不審でした。
「母よ。みんなひもじくてならねえんだ。はやくかえってきてくんな」
そう書いてあるのです。それも、くねくねと曲がりくねった金くぎ流のおぼつかない文字で、一読肺腑をえぐるような悲しい訴えと祈願が、たどたどしげに書いてあるのでした。