Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme
書紀にしるされた全般をいまここに詳述は出来ないが、現今の斑鳩の里がもたらす和かな風光からは想像も及ばぬ。諸々のみ仏の大らかに美しいのが不思議なほどである。百済観音の虚空に消え行くごとき絶妙の姿も、思惟の像にみらるる微笑も、かの苦悩の日のひそかな憧れであったのだろうか。凄惨な生の呻吟から、飛鳥びとの心魂をこめて祈った、祈りのあらわれでもあったろうか。
それにつけてもかかる時代に成長され、難局に処せられた上宮太子の憂苦とはいかばかりのものであったか。書紀をとおして私はまずそのことを思わざるをえなかった。大陸文明の伝来に当って、これを厳正に摂取されたのはむろん大事に相違ないが、そういう外的状勢乃至文化論からのみ太子を論じることに私は同じ難い。最も親しき人々の流血の惨事――この大悲痛からの脱却を身命を賭して祈念された勁い信念、何よりもまず私はそこへ参入したいと願うのである。これが書紀を読んだ後の私の感銘であった。
夢殿の地は太子の御邸だった斑鳩宮の址といわれる。太子薨去の後、御遺族は悉く蘇我入鹿のため滅ぼされ、斑鳩宮もむろん灰燼に帰したのであるが、およそ百年後の奈良朝にいたって再建された夢殿が、幾たびかの補修を経て現在に伝わったのだという。