Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme
文学の上で私の知っているところでは、「ファウスト」第一部にグレエトヘンのささげる美しい祈りの言葉がある。「痛おおきマリア様、どうぞお恵深く、お顔をこちらへお向け遊ばして、わたくしの悩みを御覧なされて下さいまし」という句に始まる祈祷は哀調にみちた美しい祈りであると思う。実際、洞窟の中に天を仰いで佇立しているマリアを眺めると、何かしら心が痛んでくる。受苦聖母はその運命のゆえに、人間を懺悔と悲哀に誘うのだろうか。磔刑になったキリストの像はみていて気持のいいものではない。ああいう激烈さ、残酷さ、あらわな受難の表情を和げるために、中世はマリア像を専ら礼拝し、マリアを通してキリストを偲んだと、或る本で読んだことがある。磔刑を眺める人間は祈りを忘れて殺気だつのかもしれぬ。そうした危険は、或はマリアによって悲しく静められたのでもあろう。しかしその代り、マリア像は、人間に内攻する精神をもたらしたのではなかろうか。
百済観音をみて心愉しくなる理由のひとつは、近代に激しい内攻症を根絶してくれる点にある。私はそう思う。これを忘却の精神と呼んでもいい。百済観音は、異邦の神々にもましてレエテの河の水浴に通達していたのかもしれぬ。