Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme
翌日法隆寺を訪れたときは、風がつよく金堂の扉は悉く閉ざされ、うす暗い堂内は一層暗くて壁画などは殆どみえないような状態であった。私は一番先に百済観音の前に立ってみた。妙に白っぽい姿が薄闇のなかにすらりと立っていて、昨年の秋感じたようなほのぼのとした暖さがみられない。私は全く無感動のまま、これはどうしたことだろうと自分の心を疑ってみた。春のけだるさのためかもしれない。私の心は空虚であった。何かの信念を求め、過去から脱却しようとしてこの御堂に急ぎまいるときの心にのみ、百済観音が最初の救いとなるのであろうか。或る情熱にとらわれているとき、はじめてあの漂うような精神の焔は、そのまま天啓ともなるのであろうか。だがきょうの私は怠けものであった。
ところがそういう私にとって、念持仏厨子の右側に立つ天平の聖観音像が、何となく親しみふかくみえてきたのである。百済観音に比すれば、天平のこのみ仏は、成熟した女体をうつしたように生ま生ましく人間に近い。顔は推古仏の面長に比しまる昧を帯びているし、眼ははっきりと透んだ瞳をもつ。胸も胴も腰部も、現身のようになまめいて、薄闇のなかに艶麗な姿で立っている。