Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme
その場所というのは――つまり、もとの夫宇津木文之丞のいるところ、そこよりほかはないはずです。お浜はじっと考え来って血がすっと胸から頭まで湧き立ちました。
袷を投げ出した時――衣類の間に見えたのは袋に入れた一口の懐剣です。
お浜はこの懐剣を見ると、
「死!」
この世で最も怖ろしい感情。
「生きて生恥を曝すより、いっそ死のう」
これがこの瞬間に起った考えでありました。
お浜は今まで死ぬ気はなかったのです、郁太郎をつれてとにかくこの家を出て、広い世間のどこかに隠れ家を見つけようと、無鉄砲な考えで胸も頭もいっぱいでした。
生きる執着が残っていたればこそ、いろいろと思い煩ったものを、それが全く取れてしまえば、もう道は開けたので……その道は地獄よりほか行き場のない道ではあるけれども。
お浜は手早く懐剣を拾い取って、盗み物を隠すように懐中へ入れてみると、胸は山のくずれるような音をして轟きましたけれども、お浜の面には一種の気味のよいような笑いがほのめいて、じっと眼を行燈の光につけたまま失神の体で坐っている。
「浜、浜はまだいるか」
これは竜之助が呼ぶ声。
「浜はおらぬか」