Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

大菩薩峠

一

「浜、雪は積ったか」

炬燵に仮睡していた机竜之助は、ふと眼をあいてだるそうな声。

「はい、さっきから少しもやまず、ごらんなされ、五寸も積りました」

「うむ……だいぶ大きなのが降り出した」

「大きなのが降ると、ほどなくやむと申します」

「この分ではなかなかやみそうもない、今日一日降りつづくであろう」

「降っているうちは見事でありますが、降ったあとの道が困りますなあ」

「あとが悪い――」

竜之助は横になったまま、郁太郎に乳をのませている差向いの炬燵越しにお浜を見て、

「あとの悪いものは雪ばかりではない――浮世のことはみんなそれじゃ」

今日は竜之助の言うことが、いつもと変ってしおらしく聞えます。

「ホホ、里心がつきましたか」

お浜は軽く笑います。

「どうやら酒の酔もさめかけたような――」

竜之助はまた暫らく眼をつぶって、言葉を休めていましたが、

「浜、甲州は山国なれば、さだめて雪も積ることであろう」

「はい、金峰山颪が吹きます時なぞは、わたしの故郷八幡村あたりは二尺も溜ることがありまする」

こんなことを途切れ途切れに話し合って、雪を外に今日は珍らしくも夫婦の仲に春風が吹き渡るように見えます。