Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme
大菩薩峠
一
一
昨日も、今日も、竜之助は大津の宿屋を動かない。
京都までは僅か三里、ゆっくりとここで疲れを休まして行くつもりか。
今日も、日が暮れた。床の間を枕にして竜之助は横になって、そこに投げ出してあった小さな本を取り上げて見るとはなしに見てゆくうちに、隣座敷へ客が来たようです。
「どうぞ、これへ」
女中の案内だけが聞えて、客の声は聞えないが、畳ざわりから考えると一人ではないようです。
「お風呂が明いておりまする」
「ああ左様か、それではお前、さきにお入り」
「わたしはあとでようござんす」
「御一緒にお入りなされませ」
客は若い男女の声、それが聞いたことのあるようなので、竜之助は本を伏せる。
隣へ来た客というのは、火縄の茶店で竜之助と別れた男女。竜之助は再び耳を傾くるまでもなくそれと悟って、そうして奇妙な心持がしました。
「参宮の帰りにしてはあまり早い」
今宵はあまり客も混雑せず、大寺にでも泊ったような気持。静かにしていると、襖を洩れて聞ゆる男女の小声が、竜之助の耳に入ります。
「明日は京都へ着きますなあ」
「京都へ着いたとて……」
男は歎息の声。
「わたしは、早うお雪さんに会いたい」