Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

六

「薩州の田中新兵衛と聞いた」

「田中新兵衛……そうか、覚えておくことだ、あんなのが好んで暗殺をやる。去年、四条磧で九条家の島田左近を斬ったのも、まだ上らぬのじゃ」

「暗殺が流行るそうだな」

六

壬生の村から二条城まで、わざと淋しいところを選んで、通りを東に町を縫い、あてもなく辿り行く人影に見覚えがある。まだ前髪立ちの少年なるに、腰には厳めしき刀を差し、時々は扇子の要を柄頭のあたりに立てて、思い出したように町並や、道筋、それから仰いで朧月の夜をながめているのは、いつのまにこの地へ来たか、その人は宇津木兵馬であることに疑いないのです。

世は混乱の時といえ、さすが千有余年の王城の地には佳気があって、町の中には険呑な空気が立罩めて、ややもすれば嫉刀が走るのに、こうして、朧月夜に、鴨川の水の音を聞いて、勾配の寛やかな三条の大橋を前に、花に匂う華頂山、霞に迷う如意ヶ岳、祇園から八坂の塔の眠れるように、清水より大谷へ、烟とも霧ともつかぬ柔らかな夜の水蒸気が、ふうわりと棚曳いて、天上の美人が甘い眠りに落ちて行くような気持に、ひたひたと浸けられてゆく時は、骨もおのずから溶ける心地がする。