Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme
あの、たったいま十人ほどのお武家が、こちらへお通りになりましたから、もしやお邸のお客様ではないかと思いまして」
「いや、そんなお客様はおいでがない、十人はさて措き、一人もお見えになりませぬ」
「そうでございましたか」
お豊はここにも言わん方なき失望でありました。
川上へ雨が降ったので、初瀬川の水嵩は増していました。河原の中程にあった地蔵堂は引き上げられて、やや離れた竹藪と仮橋の間に置かれてあったが、その藪へも水はひたひたと寄せているのでありました。
お豊は仮橋から向うを見渡したけれど、桜井の町の燈火が明るく見え、多武峰が黒ずんでいるほかには人の影とては見えないのであります。
淡月は三輪山の上を高く昇っているのに、河原はなんとなく暗い――涼しい風は颯と吹いて来た。川波を逐うて、蛍が淋しいもののようにゆらりゆらりと行く。
「ああ、わたしとしたことが、なんでこんなところまで来たのでしょう」
幻影を追うて夢の里を歩み、何かに引かれてここまで来たが、気がついてみると、お豊は自分ながら、なんでこんなところへ来たのかわかりませんでした。
ここへ来ると気が抜けて、お豊は行くのもいや、帰るのもいやになりました。