Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

「四年目の五月の節句じゃな」

見台を前にして何かを読んでいた男の人は、女房の話しかけたのをこう受けてちらと見向きますと、余念なく衣を縫うている女房の襟元のあたりが見えます。

「来年もお山に試合がございましょうねえ」

「ある」

「どなたが勝ちましょう」

「誰が勝つか」

「お前様このごろは根っから試合をあそばしませぬ……」

「日蔭者の身ではなあ」

こういって男がなんとなく深く歎息をした時に、女は針の手をとどめて、

「ほんとにもう、日蔭者になってしまいましたわねえ」

男の面を見て淋しく笑います。

「いつまでもこうしてはおれぬ」

男の所在なげに呟く時、女は持っていた縫物を投げ出して、

「坊や、抱こをおし」

膝にまつわる可愛らしい男の子を抱き上げて、

「ほんにお前様のお腕なら、この広い江戸表へ道場を開きなされても立派に師範で通ろうものを……こうしていつまでも日蔭者同様の身ではねえ」

「いまさら愚痴を言っても追っつかぬ、みんな身から出た錆じゃ」

「でもお前様……」

女は子を抱いたなり男の方へ膝を向け、

「私たちは日蔭者でも、この子だけはねえ」

「うむ――」

男は俯向いて物を考えている様子です。