Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
女の嘆きや訴えを無視するのではなく、その声がまったく聞えないかのように。それはちょうど、しきりに吹く風の中にあって、石がその風と些かのかかわりもないのと似ているようでもあった。
女は平さんの小屋に十二日いたが、十二日めの夕方に去った。その日、マットレスを売りに出た平さんが帰って来ると、女は小さな風呂敷包を膝の上にのせ、小屋の中で板の間の端に腰をかけていた。――冬の日の午後四時すぎ、戸外もたそがれているし、小屋の中はもっと暗く、肩をすぼめた女の小柄な姿は、その深い暗がりの中でいまにも消えてしまいそうにみえた。
平さんはいつものとおり、外套をぬぎピケ帽をぬいで、女の脇から板の間へあがった。
女はうなだれたまま、土間の土を見ていた。ちまちまとした顔は白っぽく乾いて、ちぢんだようにみえ、膝の上にある両手も灰色に皺立って、指先は力なく垂れていた。彼女はなにかを待っているのだろうか、うしろでは平さんの動きまわる物音がしている。いまになってもまだ、平さんがなにか云ってくれるだろうと、期待しているのであろうか。――そうではないらしい、女はやがて、右手をあげて髪に触り、細い力のない溜息をついた。