Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
と紳士はいった、「しょうばいじゃない、釣るほうだがね、うちの庭の池には釣ってきた鯉が、いつでも四、五十尾は放してあるんだ、よけいなことかもしれないがね、きみ、こんなたんぼ飼いの鯉なんか臭くって食えやしないぜ」
そういうと紳士は鞄とステッキを持ち直し、ちょうど来かかったバスのほうへ去っていった。
「きいたふうなことをいうやつじゃないか、なにがたんぼ飼いだ」
ちょろはあざ笑ったが、それでも気がかりになり、鯉の容器の中をのぞいてみた。そっと手を入れてそいつを突ついてみ、その指を鼻へ持っていって嗅いでみた。
「さかな臭いだけじゃないか、知ったようなごたくをぬかして、へ、うちの庭の池だって、印旛沼か手賀沼か、へ、ああいうのが三百代言かなんかやるんだな、きっと、なんでも人を吃驚させればいいと思ってやがるんだ」
彼は問屋のおやじのいったことを思いだした。山の手の人種は川魚が嫌いらしい。とぼけたような口ぶりだったが、あのじじい案外よく知ってたのかもしれないぞ。こう考えると、にわかにこころぼそいような、この世ぜんたいが苦難に満ち満ちた、将来性のない、わる賢い人間だけしか生きられない世界のように思えてき、彼は大きくて長い溜息をした。