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Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

島さんは見られることに馴れているのだろうか、例のものが喉から鼻へ抜けるまで、ゆうゆうと発作に身を任せていて、それが終るといさましく笑った。

「これはサプライズだ」と島さんは岡田少年に云った、「きみはシェクスピアを知ってるんだね」

「岡田少年は英語の天才だ」寒藤先生が代って答えた、「ひるまは大新聞社に勤務し、夕方からは正則英語学校の夜学にかよっておる、将来は大英語学者になる人物なんだ」

「それは洋々たるものですね、きみ岡田くん」と云って島さんは右手を差出した、「握手をしよう」

それから酒がまわり始め、寒藤先生が「細君はどうした」と云った。細君に一杯酌がしてもらいたい、客を迎えるのに一家の主婦が顔をみせないという法はない、と主張したが、島さんは「使いに出ているがもう帰るでしょう」と答えただけであった。

島さんの妻は、――あとでわかったことだが、決して客の前へは出ない。近所づきあいもしないように、島さんのどんな親しい友人が来ても、挨拶はもとより、一杯の茶を出そうともしないのである。この「街」のかみさんたちは、顔の痣を見られたくないからであろう、と云っているが、そんな女らしい羞恥心からでないことは、良人の島さんがよく知っているようであった。