Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
宿はずれに、上州屋というのがあった。路ゆく人の言葉通り、大きな店ではあるが半ば腐った古い軒が傾いていた。広い土間へ入って、框のそばに切ってある大きな爐に手をかざしていた盲縞の布子を着ている五十格好のお神さんに、一夜の宿をお願い申した。
お神さんは、私らの風体に下から上まで冷やかな視線を放ちながら私たちの口上をきいていたが、しばらく考えた末、手前どもでは旅の芸人を泊めないことにしている。この暮れ以来佐久地方へ、悪い者が入り込んであちこち騒がしているので警察の達しがやかましい。気の毒だがほかの土地へ行って貰いたい。しかし話をきけば哀れでもある。今夜一泊だけはそっと泊めてやろう。
『米を、買うぜにはあるかい』
『ございます』
『そうかい、豪勢だね。一升十七銭――三人だから一升あれば足りるだろう。ぜにをこっちへ出しな、わしが買ってきてやる』
『はい』
『ところで、木賃の方は八銭ずつ、都合二十四銭。みんなで四十一銭でがんす』
ひどく胸算用の達者なお婆さんである。私たちは、お縋り申すという態度で、小さくなって框へかけた。玉汗が、先刻貰った五十銭銀貨を、お神さんに渡した。