Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
春宵因縁談
はなしのはじめは三木武吉と頼母木桂吉の心臓の出来あんばいから語りだすことにしよう。
このほど、頼母木東京市長が急逝した。私としては、この人の死をきいて別段深く感慨にうたれたというわけではないが、ただ頼母木が持っていた心臓の強弱については、二、三の思い出があるのである。頼母木の心臓は、強いて形容するよりも、しぶとい心臓と言った方が当たっているかも知れない。
彼は備後国府中の生まれで、少年のころ東京へでてきてから当時報知新聞の編集局長であった熊田葦城の書生となった。その熊田老がこの二月中旬に、鎌倉材木座の寓居で他界すると、僅かに一週間たつかたたぬかのうち、頼母木もそのあとを追ったのは、前世の約束であったのであろうか、不思議な縁である。
いまごろ、この二幽人は三途の川の土手あたりで久濶を叙しながら、互いに微苦笑を交していることであろう。
私が二幽人の微苦笑の面を想像したには意味があるのである。頼母木は書生であったから朝な夕な、葦城邸の掃き拭きから水汲み、使い走り身の労苦を惜しまなかった。両の手の甲にひびが裂れていたことであろう。
それから用事が済むと子供の相手をさせられた。