Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
美音会
十一月二十七日夜六時頃、先輩の生駒君と一緒に有楽座の美音会へ行ってみる。招待席は二階正面のやや左に寄った所を三側ばかり取ってあるが、未だ誰も見えていない。しかし、他の席は殆ど満員という有様で、廊下には煙草を口に銜えた人が多勢行ったり来たり、立談している人もあって、その中に、美しく着飾った貴婦人達が眼を惹く。有楽軒の食堂もかなり繁昌している。演奏開始までには未だ二十分も間があるので、菓舗へ行って椅子に腰を下ろすと、強いコーヒーの匂いがする。一杯註文すると、今摺ったばかりなので旨い。菓子と柿を食って自分らの席へ帰り、じっと開始時間を待っている。
開演時間になって、朝日の半井君と、いま一人歌沢の好きな老人、万朝の中内、石井両君、都の何とかいう人たちがドヤドヤと入ってきて席を取る。間もなく幕が上がると、吉備舞が始まった。君が代、梓弓、神路山の三番が続けて舞われる。曲は何れもおとなしいもので、かつ楽手が皆芸人らしくない所が気持ちが良い。葭本幾野という歌手の声は、まるで場内から溢れ出すように透った良い喉なので聴衆は皆感嘆する。『佳い声だね、佳い声だね』とあちこちで言われる。