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Japanische Klassiker mit Furigana

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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme

Aozora Bunko

たぬき汁

一

伊勢へななたび熊野へさんど、という文句があるが、私は今年の夏六月と八月の二度、南紀新宮の奥、瀞八丁の下手を流れる熊野川へ、鮎を訪ねて旅して行った。秋の落ち鮎には、さらにも一度この熊野川へ志し、昭和十五年の竿納めとしようと思っていたところ、心なき台風のために山水押しだし、川底荒れてついに三度目の旅は、あきらめねばならなかった。

二度目のときの帰り路は、やはり六月のときと同じように、新宮市から木の本へ出て、そこから三時間ばかり省営自動車に乗り、十里あまりの長い矢の川峠(やのこ)を越えて、尾鷲へ下ったのである。矢の川峠は、紀伊と伊勢と大和の三国の境をなす大台ヶ原山を主峯とした台高山脈が南に走って高峯山となり、その裾を熊野灘に浸そうとする肩の辺にあってなお標高二千五百尺。随分難路を重ねた高い峠だ。

大台ヶ原を中心とした深い天然林は、昔から猪の産地で、ここの猪は味において国内随一であるときいていた。これにつぐのが伊豆の天城山、丹波の雲ヶ畑、日向の霧島山あたりで猟れるものであるそうだが、紀州の猪が最も味がよろしいというのは、ここが団栗林に富んでいるからであると言う。