Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
海豚と河豚
一
鯨と名のつくものなら、大抵は食べたことがある。『大井川のくじらは、婦人にしてその味を知るなり』と、言うことからそれは別として山鯨、なめくじら、海豚に至るまで、その漿を舌端に載せてみた。
ところで、山鯨のすき焼き、なめくじらの照り焼きなどは大そうおいしいけれど、海豚の肉はどうも感服しかねる。晒し鯨の酢味噌にしたところが、肉そのものには何の味もなく、ただその歯切れのよさを貴ぶだけで、酢味噌の出来が旨くなかったら、食べられるものではない。
缶詰に至っては、沙汰の限りだ。てんで、口中へはいるものではないのである。君は鯨取りの元締だから、何とか鯨をおいしく食わせる法を講じられないものか、と友人のある捕鯨会社の幹部に問うてみた。そこでその友人が言うに、それは君の認識不足だ。鯨の上肉は到底、山鯨やなめくじらの比じゃない。晒し鯨や缶詰を食っただけで、鯨の味品を論ずるとは僭上至極、近く機会を求めて鯨肉がどんなにおいしいものか君に食わせてみせる。食ってみてから議論を聞こうという気焔である。
晒し鯨は、鯨の皮膚から脂肪を絞った糟だ。缶詰にするのは、肥料にしても惜しくないような肉だから、君が賞讃しないのも無理はないが、一体関東人は鯨肉の本性を知らない。