Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
幻滅を感ずるとは、ほんとうにこのことをいうのであろう。幸い、私には西陣に親戚があったので、関西に旅するたびにそこを訪れ、大市から取っては義兄と二人で、その贅餐に喉を鳴らした。
二
そんな訳で東京にいては、すっぽんのことを全くあきらめていた。ところが、四年ばかり前であったか、偶然御手洗邸を訪れると、主人と相対する晩酌の卓上に、すっぽんの羮の鍋が運ばれた。碗の縁を啜って、口腔に含むとその媚、魔味に似て酒杯に華艶な陶酔を添えるのであった。上方の料理には不自然な調味が加えてあるのであろうが、それは求め得なかったすっぽんが持つ禀賦の野趣が、この羮に匂うのを味わったのである。
主人に説を聞くと、このすっぽんは豊前国駅館川の産で、煮るとき塩と醤油の他、何の調味料も加えなかったのであるという。むべなるかな、この旨味こそ真に烹調の理によって得たのである。と、絶讃をおくることができよう。
それから後、御手洗邸へ豊前国からすっぽんがきた話を聞かなかったのであるが、関西へ旅した時とか、すっぽんの話が出るたびに豊前国のすっぽんを思い出さぬことはなかったのである。
ところへ、このたびの便りである。