Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
十五代様と家達公
明治になってからも徳川家の当主は、歴代の命日には自ら芝の霊廟へ詣でて祭事を営むか代参を差し向けている。
そこで、十五代様在世中は時々十六代家達公と霊廟の桐の間で顔を合わせたものであるそうである。ところがおかしなことに、十五代様が霊前へ先に香をあげて桐の間を退出する時、後から十六代様が入ってきて袖を摺り合っても、二人とも顔をそむけて言葉は勿論のこと目礼さえも交わさなかったそうである。それほど、十五代様と家達公とは仲が悪かったものであると語って、有章院の別当は笑ったのである。
芝の霊廟は年に一度ずつ大掃除をした。この大掃除には、江戸川べりの行徳付近の百姓が人夫となってやってくる慣わしがあった。百姓は、モンペに似た短い袴を着けて、雑巾を両手に縁や閾を這い回った。
霊廟に、別当というのがついている話は前に書いた。増上寺は宗門の府であるというに対して将軍家は霊廟を特にお守りさせるために別に寺を建立したのであるが、これを別当と称した。であるから、別当は増上寺に対して独立している。芝の霊廟には別当が六ヵ寺あった。そのうち、七代有章院の別当瑞蓮寺というのが一番大きく、昔はいまの芝の正則中学校のあるあたりに二千坪の寺境を持ち、伽藍は百間の廊下を持つ建築物であった。